きまぐれログ #6: 南極と北極のあいだ
この前散歩をしていたときに出会った野良猫が可愛かったので写真を撮らせてもらった。頑張ると僕がどの地域に住んでいるかを推測できると思うけど、可愛さを共有したい気持ちが強いので、細かいことは考えずに共有しちゃおうと思う。
ここからは月並みなポエムを書く。いつものように、些細なことを、長ったらしく、不格好なメタファーと一緒に。猫の話はここで終わりなので気をつけてほしい。
随想
「好きなこと」と「仕事にしたいこと」の間には南極と北極の間くらいの距離がある1。 例えば僕は日本語ラップが好きだ。けれど今の所これを仕事にはしたくない。 文章を書くのは好きだ。でも仕事にするのはまっぴらごめんだ。 人の役に立つようなことを仕事にしたい。そういう活動が特段好きなわけじゃないけれど。 好きなことを職にしたい人、職にしたことを好きになりたい人は多いのかもしれないけれど、僕にとって両者は可分で、遠くて、排他的だ。
しかし、南極と北極がひとしく寒いように2、「好きなこと」と「仕事にしたいこと」の間にも共通項がある。等しくどちらにも熱量を注ぎたくなるという点だ。仕事にするのが嫌なことでも、好きなことにはどっぷりと浸かりたい。好きではなくても仕事にしたいことなら、僕の人生を費やしてもいいと思う。欲張りだとは思うけれども、どちらも頬張りたくなる。
この共通項は本当に面倒なものだ。僕が自由に振る舞える時間は有限で、好きなことと仕事にしたいことは大きく異なるのに、そのどちらか一方だけではあまり人生に満足がいかないのだから。両方に熱量をぶつけようと思うと、僕のような凡人の場合、すき間時間を上手く使うだとか、睡眠時間を削るとかいうのが大前提だ。その上何かを捨ててようやく、ほんの少しだけ、その両方で水滴ひと粒程度の満足度が得られるようになる。 二兎を追う者が得られるのは二滴ほど、というわけだ。
しかし、そんな生活をしていれば、すぐに人は疲れ果てる。そして自分を顧みた時に、そこまでして得たのがたったの二雫だとしたら、人の心なんて簡単に折れるものだ。好きという感情を捨てて使命感に傾倒できたなら、あるいは野心を放り投げて愛に溺れられたなら、もっと自分は満たされていたかもしれない — そんなふうに、戻れもしない過去に思いを馳せるのだ。
かの 27 クラブに仲間入りできるだけの才に恵まれていたのなら、早めに人生の幕を閉じることになろうとも、1 日 24 時間全てを使って二兎を追ってみたことだろう。何も捨てずに人生を走りきれたら、きっと最後はひだまりの中にいるみたいな感じなんだろう。
けれど、凡人の僕には無理な話だ。だからこそ僕は現実的になるべきだ。愛情と仕事の片一方だけを選べる程度に大胆になるか、二兎を追って一兎も得られなかった自分を許せるだけ寛大になる、という形で。何かを諦めても幸せになれる道はあるんだろう。自分に甘iいとバチがあたる、なんて思考はくだらないアポフェニアにすぎない。
南極と北極のあいだに位置するここ日本からだと、まずは南極に行くにも北極に行くにも、まずは始めに南か北のどちらかを選ばなくてはならない。選べる自分になりたい。あるいは、どっちにも行かない、あるいはサハリンスクだとか台湾だとかで満足して日本に戻ってくるような自分であっても、自分を許せるようになりたい。そういうふうに、少しずつでもいいから、自分を作り変えてやらないといけないんだろうなと思う。
……下品な比喩に逃げて現実逃避する癖、無くさなきゃ。 今日も一日曇天模様だった。
日本語ラップ
PUNPEE さんの名盤『Modern Times』に入っている『Pride』という曲の以下のフレーズに出てくる BudaMunk って何だろうか、と疑問に思った。
PremierがGuruを選ぶ理由 BudaMunkがJoe Stylesと組む理由 俺らが音楽に持つ基準なら紛れもなく最後は自分
ビートメーカー Premier とラッパー Guru と言えば Gang Starr だ。だから BudaMunk と Joe Styles もトラックメイカーとラッパーの名前で、この二人はよく一緒に曲をやっているのだろう、と察せた。なんならこの二人はもしかしたら BoomBap の名手なんじゃないか、という期待も頭をよぎった。彼らが Premier と Guru との対比で出てきていて、かつこのリリックが ISSUGI さんの口から吐かれたものなのだから。
そこで調べてみると、そのとおりだった。ただ Joe Styles さんは英語でのラップがベースらしく、英語が苦手な僕には少し早そうだったので、ここのところ数日は BudaMunk さんというビートメーカー周辺の曲を dig っていた。
色々聞いた中で一番好きだったのは、『The Corner』というアルバムでMCKOMICKLINICK, ISSUGI, PUNPEE がクールなバースをスピットしている『Serial Chiller』という曲。重すぎずかるすぎない Boom Bap はいつでも聞けるのに痺れる。
あと『The Corner』だと JJJ さんの『Everywhere』も痺れる。「世代的には離れてるけど、どういうつながりなんだろう」と思って調べたら、Mastered で対談してた。面白い。
BudaMunk さん関連のもの以外だと、ここ最近は RYUZO さんの曲もめっちゃ聞いた。素朴な HIP HOP ほど心に刺さるものはない。金曜日はついつい『Hate My Life』を聴きたくなる。人生に疲れている時、過去を悔いている時ほどそう。
最近 MV が出た曲だと、KEN THE 390 さん、R-指定さん、般若さんのマイクリレー『Overall』が良かった。KEN THE 390 さんの教科書的なラップがロック的なサウンドの上で走った後、R-指定さんの(かの Diggy-MO さんを思わせるような)低音かつローテンションなフローが続く感じがすごくいい。般若さんのセルフサンプリングやネームドロップも歴史を感じて素敵。
最近心労が激しくて、日本語ラップを聞くのが唯一の人生の楽しみ。